亀谷春菜

国立音楽大学在学時からフリーランスミュージシャンとして活動、在学中に個人事業主として開業。業務委託契約で楽曲制作、楽器演奏などで生計を立てるも、結婚を伴う引っ越しを機に派遣社員として販売職に従事する。派遣から直接雇用を経た後、会社員としての働き方に疑問を覚え、再びフリーランスへ。

フリーランスと聞いて、皆さんは一体どのような言葉をイメージされるでしょうか。

現代では主に、会社や団体に属さず、仕事に応じて自由に契約して働く人、すなわち個人で仕事をする人を指すことが多い「フリーランス」という言葉。経済産業省が2021年に公表したガイドライン内では「実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、 自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者を指す」と定義されています。

ちなみに、フリーランスの語源を遡ると、なんと中世ヨーロッパにまで遡ります。

中世で王や貴族は主力となる騎士を中心とした封建軍の補強として、戦争の度に傭兵団と契約して戦争に臨んでおり、その中には正式に叙勲されていない騎士や傭兵団を離れ戦場に臨む兵士達がいました。当時は槍騎兵(lancer)が自分の従卒として歩兵や弓兵を連れている形態が多かった為、契約の際には槍の本数=1戦闘単位としてカウントされていたのです。

つまり、まだ敵勢力と契約を交わしていない(free)、戦闘単位(lance)を指す言葉として「freelance」という言葉が用いられるようになったという背景があるようです。そして、近世以降になると、組織を離れて働く状態を指す言葉に変化してきた、ということです。

さて、このコラムを書いている私自身、現在フリーランスという形態で仕事をしていますが、この3月までは会社員として働いていました。もともと大学在学時にミュージシャンとして個人事業主で開業していましたが、結婚というライフスタイルの変化、そして関東から関西への引っ越しを機に派遣社員として働き始め、そのまま直接雇用へと移行し、4年間接客販売業を経験しました。

つい先日まで百貨店や量販店の中での接客に従事していた私が、4月からはフリーランスで自分のスキルを使って仕事をしていく、つまり、「モノ」を販売していた私が今度は自分自身を商品として売っていく立場になったのです。

たとえば、百貨店では、平日と土日祝日では来館者数が大きく違います。接客数も大きく変わり、付帯業務量も日々変化していきます。

忙しい日でも、暇な日でも、増税前でも、コロナ禍でも、

自分が自発的に動いても、早く時間が過ぎないかなと時計の秒針を見つめていても、

お給料は変わらない。

4年間販売職に従事していた中で、もともと自分の技術と時間を切り売りしていた私は、度々、疑問を感じていました。生産性に応じた報酬が得られないのは、私の仕事のモチベーションには繋がらないな、と。

また、会社員として働くことによって、今までフリーランスで働く中ではなかった悩みも生まれてきました。

特に退職を考えるきっかけになったのは、職場の人間関係でした。

私は販売員としてのほとんどの時間を関西で過ごしていて、離婚をしたこともあり実家のある関東に戻ってきたのが昨年の9月。同じ会社の中で異動しました。

関西という風土が大変私にあっていたのか、それとも、東京で働き始めて運が悪かったのか、異動直後から人間関係での大きな悩みを抱えるようになりました。

どんな場所でも心ない言葉をかけてくる人はいますが、自分の時間の多くをそういった人と過ごすことや、ちょっとした嫌がらせの回数が重なっていったことで、次第に私の精神は蝕まれていきました。

その悩みを上司に相談するも、皆自分の保身に走っていく姿に幻滅し、コンプライアンス窓口に相談したところで想像以上に事態の改善に繋がることもなく、大変驚きました。

自分の心と身体は自分で守っていかなければならないと思った私は、今この状況から速やかに逃げなくてはいけない、会社は私を守ってくれない、と退職を決意しました。

周囲の友達や、以前仕事で付き合いのあった仲間に会社を退職することにした、と報告したところ、そういうことなら、と、有難いことに私にできる仕事の話を持ってきてくれたこともあり、この度晴れてフリーランスに舞い戻ってくることになったというのが今回の経緯です。

ただ、フリーランスにはもちろん、デメリットもあります。

まず、会社員のように会社に守ってもらえるということがありません。

固定の給料ではなく自分の仕事の成果によって報酬が変わっていくため、月によってバラ付きが出ることも多いです。

また、会社員だと社会保障も充実していますが、フリーランスになると厚生年金から国民年金になるので、将来的に貰える金額が変わってきたり、保険料も全て自己負担になるため、健康保険料が上がります。

そして、社会的信用も低くなってしまうため、クレジットカードの審査に通りにくくなったり、大きなローンを組むことが難しくなることも覚悟しないといけません。

それでも私がフリーランスという働き方を選んだのは、コロナ禍という未曾有の事態の中で働く場所や時間を選ぶことが出来たり、人間関係のストレスを軽減できるといったメリットの方が自分にとっては大きいと感じたからです。

毎日の通勤電車の中でマスクをしていない人もお見かけしましたし、実際に私は昨年、百貨店で接客したお客様から後日電話がかかってきて、コロナの陽性者になってしまいましたが長い時間接客していただいたので一応ご連絡させて頂きましたと言われ、びっくりしました。

感染症対策がきちんと成された状況で働いているとは言え、不特定多数の方と接するのは、持病のある還暦を超えた両親と同居している中で不安を覚えることも多かったです。

また、どうしても逃げることのできない人間関係のストレスから解放されるというのもかなり大きいです。

社会という戦場の中で戦う一(いち)フリーランサーとして、自分という商品の価値を高めるために勉強をすることも沢山あり、日々模索しながら生きています。

働き方が多様化している現代において、全ての人が自分にあった働き方を選択しやすい世の中になっていくことを期待しています。