橋本綾子(一般社団法人Cross-Community Design and Management Lab.)

2015年慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修士卒業。大手都市銀行へ就職後、現在は大手Webサービス会社で社内システムの企画・運用を担当し、組織の生産性向上を図る業務に従事。大学生の頃より〈個人が望む最適な働き方の選択が可能なコミュニティの実現〉を目指し、活動を続けている。学部生時代は労働法を専攻し、現在は企業に勤める傍ら自身でも一般社団法人を設立。パラレルキャリアを実践しつつ、起業家自立支援サポートやキャリア支援、横浜でのビジネスコンテストを主催。

「2020年までに女性管理職の割合を30%へ」

 そう息巻いていた政府の目標は、未だ達成の様相を見せていない。但し、2022年には女性活躍推進法の改正を控え、主に中小企業に対して新たに女性活躍の情報公開が義務付けられるなど、女性の労働参加は大きな変革期を迎えている。2020年に実施された帝国データバンクの調査結果も女性管理職の割合は平均7.8%と前年比0.1ポイント上昇。政府目標である「女性管理職30%以上」を超えている企業は7.5%と、依然として低水準にとどまっている。

 内閣府発行の「男女共同参画白書」平成25年度版及び26年度版によれば、我が国の役職別管理職に占める女性割合は、民間企業の係長相当職で14.4%、課長相当職で7.9%、部長相当職で4.9%だ。全体従業員数のうち、女性の従業員数は42.8%であり、全体管理的職業従事者のうち、11.2%が管理的職業従事者となっており、7年前と比較しても状況はあまり進展していないことが伺える。

 少し古いデータとなるが、東京都が2013年に実施した『東京都男女平等参画状況調査』によると、男女従業員に上司から管理職になることを進められたら引き受けるかどうか尋ねた結果、「引き受けない」と回答した女性は、男性の約2倍であった。男女雇用機会均等法など様々な施策が施行されているが、女性のロールモデルの圧倒的不足など企業のトップを担うのは男性であるという、男性中心社会から脱却出来ていない社会問題がある。

 修士論文の執筆の際に、女性が管理職へ昇進する際に「昇進意欲向上の促進・阻害に影響する要因」を探るために男女400名にアンケート調査を実施したことがある。本調査結果では、阻害要因として「管理職や昇進に関してのネガティブイメージ」の存在があげられた。昇進意欲には性差よりも管理職・非管理職それぞれのポジションで大きく異なったが、特に女性管理職には、「不安」を感じる心境が顕著に見受けられた。それ以外にも、女性が管理職に抱くイメージには、ネガティブなものが多く存在した。ネガティブイメージの回答例は「責任が増える」「しんどい、給与が見合わない」「このままで良い」「責任を負いたくない」「やりがいはありそうだが、重圧を感じる」「従業員と世代構成が膠着している」「興味がない」「責任が面倒くさい」「自分の時間がない」という回答例が多かったのが非常に印象的であった。このネガティブイメージが、実際に昇進意欲を抱いていたとしても、「引き受けますか?」と言われた時には、覚悟を決めるのに抵抗感を抱いてしまう原因になる。実際に昇進意欲を抱いていたとしても、昇進を後押しすることの阻害に繋がっていることがアンケート調査等により、明らかとなった。

 我が国では、戦後復興・高度経済成長を通じて、女性の社会進出が急速に発展した。今や、女性が男性と同じように大学等の高等教育機関に進み就職活動を行うのは、ごく当たり前のことになっている。また、かつて不平等であると指摘された雇用をめぐる男女間の格差も、男女雇用機会均等法の制定などで大きく改善された。「管理職になるため」の施策にフォーカスを充てた研修は各社取り組みが増えてきたように感じている。今後は、管理職になる前の段階の人に対して「管理職になろう」と思わせる施策こそが重要ではないだろうか。そして、そのためには昇進意欲の向上のために心境の細かなケアこそが、必要なのだろう。女性は男性よりも、大きくライフスタイルが変化しやすい。それ以外にも、妊娠・出産は女性特有のものである。加えて、男女ともに経験すべき育児や介護といったライフイベントに対しても、女性に負担が多くかかってしまう社会的慣習が存在する。男性の育児等家庭的責任に関する意識調査」では、2020年10月現在育児休業の取得割合は女性が64.4%だったのに対し、男性は13.4%にとどまった。全ての施策を「男女平等」に行うのではなく、「女性」に特化した細かい心境の変化をカバーしつつ、ライフスタイルに合わせた柔軟性のある人事制度など、性差を取り入れつつも個人に柔軟性を持たせた施策も必要になってくるだろう。とはいえ、男女には必ず性差が存在し、その性差を活かした働き方をすべきだと考えられる。今後はそのような働き方を当たり前に受け入れられるような、考え方の浸透も促すワークショップなども、展開して運用していくことが必要だ。これらを踏まえて、令和という新時代には、個人の人生の豊かなキャリアプランの設計が本当の意味で「自由」に叶えられる時代になっていくことを心より願っている。