橋本綾子

2015年慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修士卒業。大手都市銀行へ就職後、現在は大手Webサービス会社で社内システムの企画・運用を担当し、組織の生産性向上を図る業務に従事。大学生の頃より〈個人が望む最適な働き方の選択が可能なコミュニティの実現〉を目指し、活動を続けている。学部生時代は労働法を専攻し、現在は企業に勤める傍ら自身でも一般社団法人を設立。パラレルキャリアを実践しつつ、起業家自立支援サポートやキャリア支援、横浜でのビジネスコンテストを主催。

連載【ビジネスリーダーのための「イノベーションとルール」】第2回

本日は、所員の橋本が本テーマでお話をさせて頂きます。

前回のコラムはこちら⇒01:制限時速6キロの国

前回は、所長の間中と共にざっくばらんに本タイトルについてお話させて頂きました。

第一回と少しだけ内容は被りますが、日本で常識とされている「月末締め、翌月末払い」の支払い条件1つを取っても、海外の商習慣とは大きな隔たりが存在しています。

クレジットカード支払いが当たり前の海外と、対法人取引に於ける約8割以上「振込」で対応する日本。しかも納品・検収が行われてからでないと請求書を発行できないため、受注する側がいつ支払いを受けられるかの確証も得られにくい。この支払い方法1つを取っても、日本の商慣習は現在の世界のグローバルスタンダードとかけ離れているとは言わざるを得ない状況にあります。

こうした商習慣は、恐らく日本特有の下請け取引の中で生まれたと思われていますが、海外企業が日本企業と取引するときの大きなハードルになっていると言わざるを得ないのが現状です。

参照:https://www.nikkei.com/article/DGXKZO93775340Z01C15A1X12000/

だが、日本もいつまでもそのような形式に囚われていては成長の道筋はない。そこで、これまでの商慣習を超えた動きとして昨今の新たな考え方となってきたものが「オープンイノベーション」です。

イノベーションそのものの外部活用によって市場を拡大

オープンイノベーション(Open innovation)は、2003年に現UCバークレービジネススクール教授のヘンリー・チェスブロー氏が提唱したコンセプトです。

自らが発案したオープンイノベーションを、チェスブロー氏は「オープンイノベーションとは、目標達成のための知識のインフローとアウトフローを活用して内部のイノベーションを加速し、イノベーションそのものの外部活用によって市場を拡大することである」と定義ししています。

参照:https://openinnovation.eu/open-innovation/

様々な自治体だけではなく、今では大学や民間企業のR&Dもこぞってオープンイノベーションに乗り出しています。イノベーションを加速度的に進めていきたいが、資金や人材面を含めたリソースのないスタートアップと、既存の顧客やビジネスモデルを抱え、リソースはあってもイノベーションのシーズがない伝統的な大企業との間で、相互に補完し合う「オープンイノベーション」が求められています。

では、オープンイノベーションによって齎される効果は何か、そしてその秘訣はどこにあるのだろうか。

イノベーションの成果を新たな付加価値の創出に繋げる(即ち「成功」ととらまえる)には、 試行錯誤のための社会実証を積み重ねることが必要不可欠です。

だが、従来の政策手法ではビジネスの急速な変化に対応できず、これが新たな産業パラダイムにおいて日本が先行的なビジネスモデルを築くことの妨げになることが懸念されていました。これは、先の第1回のコラムでも論じた通りの主張です。

レギュラトリー・サンドボックスへの期待

日本国内に於いても、そのような状況を打開するため、2018年6月に「生産性向上特別措置法」が施行され、プロジェクト型「規制のサンドボックス」制度が成立。同年7月には森・濱田松本法律事務所で、イノベーションの実現に向けて規制問題を克服するための活動を従来よりも加速させていくプロジェクトであるMHM Labが始動したりと、法規制も少しずつではあるが進捗の様相を見せています。

参照:https://www.businesslawyers.jp/articles/505

令和3年3月29日には、「スタートアップとの事業連携に関する指針」が、公正取引委員会からも正式に公表されています。もしかすると、ある一面に於いてはイノベーション創出に向けたルール作りも2003年に設計されたコンセプトから約20年の時を経て、漸くここまで辿り着いたことすら快挙なのかもしれない。

だが、このペースでは何も間に合わない。社会に取って価値あるものが、折角芽吹いても日本の規制の名の下に、持続不可能な社会構造になっているのもまた事実。

オープンイノベーションに関わるものとして、このような制約条件下の元に私たちが「これはオープンイノベーションが成功したのだ」と思えるような事実を積み重ねていくこと、そしてその事実の上に「あるべきルールを提唱すること」こそが、もしかするとオープンイノベーションの成功の秘訣なのかもしれません。