<ゲスト>
小田急電鉄株式会社経営戦略部
山脇あゆ美さん(33歳)

2011年小田急電鉄に入社。沿線事業部に配属され、カルチャー教室、リラクゼーション店舗等の沿線施設の運営管理・販促企画、ペットケア事業の企画立案・立ち上げを経験。2016年に異動した総務部には3年間在籍し、企業法務、コンプライアンスを担当。その後社内の新規事業公募制度「climbers(クライマーズ)」に応募し、今の経営戦略部へ。「ママカレ」事業は2019年4月から準備に入り、コロナ禍の混沌に翻弄されながらも創設、今に至る。

出産、子育て、家族のケアとサポート。

長く職業キャリアを歩むうえで、私たちは家族や周囲の人たちの状況から、ときに難しい選択を迫られ、解決策を導いていかなければいけない局面があります。何がベストか。どの判断が正しくて、どの判断が間違っているのか。身近に相談できる人がいないとき、新たに信頼できる仲間と出会うことで、自分自身の隠れた才能に気づき、自信を持って自らの道を選ぶことができる。 そんなサービスを開発中の山脇あゆ美さんをゲストに招き、チームスピリット、WITHのメンバーでオンライン座談会をしてみました。

対談メンバー
小田急電鉄株式会社経営戦略部 山脇あゆ美
イノベーション総合研究所 間中健介、橋本綾子
株式会社チームスピリット 藤原秀樹、竹田佳美

カレーは“ずぼら料理”か!?

(間中)今日の主役は山脇あゆ美さんです【パチパチ!!】。まず、6月11日にリリースをされたオンラインコミュニティ「ママカレ」について解説をお願いします。私自身が「ママ」ではないのでコミュニティに入れずで。。。(涙)

(山脇)今日はよろしくお願いいたします。「ママカレ」はママのカレッジという名前の通り、文字通りのカレッジ(大学)となって、出産を機にキャリアへの価値観に悩む人や、暮らし方・働き方を考える人が、自ら学ぶテーマを見つけてタテ、ヨコにつながりを作っていく場になれたら良いな、という思いで立ち上げました。

このプロジェクトは、3年前に社内の新規事業公募制度「climbers(クライマーズ)」に応募し、約90公募あった中から採用された4公募の一つとして選ばれたことで、検討がスタートしました。私が応募したきっかけは、出産を機に社会との距離ができてしまったママが職業人としてのキャリアを追求できるような環境づくりをしたいと思ったことにあります。

女性のキャリア継続にはいろいろな課題があると思います。私が着目したのは、ママ自身がやりたいことを見つけて、それを続けるモチベーションを保っていくことに課題があるのではないかということです。出産後も生き生きと活躍している先輩ママと出会ったり、新しくできたママ友との間で自分の悩みを相談し、切磋琢磨できるような場があると良いと思ったんです。

現在は実証実験のフェーズです。オンラインサロンのプラットフォーム上に、出産後にキャリチェンジをされた12名の方たちがオーナーとしてゼミを主宰し、プラットフォーム上での議論を活発化を目指して始まりました。まずはプラットフォームを通して、自分がやりたいこと、自分が出来ることを見つけるきっかけをもたらすことができればと思っています。

(間中)私はこれまで、出産を機に政治家への転身を目指す女性に何度か出会いました。その大半が政治と無縁で、親族の地盤などを持っていない方たちです。なぜ選挙という大変なチャレンジをしたのか、ある女性国会議員に尋ねたところ、「我が子が大人になったときの社会が、良い社会であってほしい。そのためには政治を変える必要があると思った」と語ってくれました。

(山脇)ママパワーを世の中に還元することで、日本全体で良いサービスが生まれたり、障壁が取り除かれたりするのではないかと期待しています。12名のオーナーの方たちも、ちょっとした発想の転換で、それぞれのフィールドを築き、少なからぬパワーを発揮されている方たちです。このパワーがどんどん伝播してほしいです。

(間中)モチベーションの維持ということで言えば、ママに限らず、多くのパパたちも何かを諦めているのではないかと思います。男性たちすべてが職場での昇進を目指しているわけではなく、その選択肢しか見通せない環境になってしまっていて、あるはずの選択肢が見えなかったり、潜在能力に気づくことができていないのかもしれません。組織内で職位が上がることと自己成長とは別の話ですが、これを一緒に捉えないといけない状況に置かれているのは、決して幸せではないと思います。

(橋本)ママじゃなくても女性って30歳頃になるとキャリアチェンジへのハードルが高くなる気がします。転職時に提示される報酬水準は20歳代の頃よりアップするけど、必ずしも報酬を求めているわけじゃない。ママ以外でも悩んでいる人たちに対して、ママカレの議論から「なるほどな!」とヒントを示せると良いなって思います。

(山脇)将来的には男性や、ママ以外の女性に加わっていただくこともあるかもしれません。

実はスタート時に「300名くらいの方たちに使ってもらえたら」と思っていましたが、無料期間とはいえスタート1カ月でユーザー(アカウント登録者数)が500名を超えたんです。そして、ユーザーの間で自然発生的にいくつかの”ママならではの価値観”に基づく議論が出てきています。例えばあるゼミでは「ずぼら料理」というテーマでオーナーとゼミ生が交流していたところ、夕飯にカレーを作るママが“ずぼら”なのかどうかという議論が交わされました。

カレーは決して“ずぼら”じゃないという意見が多いですね(笑)。何よりも皆さん、“ずぼら”をポジティブに語っています。

将来的には、ママカレのユーザーの知恵を社会にアウトプットできると良いなと思います。たとえば、いまの12名のオーナーには企業でお勤めの方がいませんが、オフィスで働くうえでの育児家事に関する「あるある問題」って、あると思うんです。働き方の制度設計に悩んでいる企業に向けて、お勤めママが提示する実効的ソリューションが示されることで、子育て中以外の従業員も助かるような循環をつくる、というアクションもできたら面白いですね。

SDGsとママ・パパの働き方

(TS藤原)山脇さんの取り組みはSDGsの考えにも重なるところがあるかもしれません。

SDGsの17目標のうち8つ目に「働きがいも経済成長も」が掲げられていますが、労働時間の効率化や、場所にとらわれない働き方を実現することは今や当然のことですので、私たちチームスピリットは、この先を追求したいと考えています。そのためには「TeamSpirit」で得ることができる勤務、経費、工数、原価、社員個々の情報といった様々なデータをどういう視点で分析し、どんな解を導くのかが問われています。

(間中)SDGsの精神を踏まえるとすると、育休の取得促進だけをするのではなく、育休の取得促進をしながらイノベーションを生み、成長率を高めなければいけません。そのためには育休取得率のデータを見るだけではなく、多面的・複合的な視点でのデータ分析が必要で、そこから追加的な施策を練る必要もありますね。

(TS藤原)“ママとパパのためのDX”を進めたいですね。ITによって時間と場所に捉われない働き方をつくることはできますが、そこから価値観を選択できるような職場にし、組織を発展させていくことがママとパパのためのDXになります。

(TS竹田)「TeamSpirit」では勤怠の打刻が1日に複数回できます。例えば子育て中のママやパパ社員の中には、5:00に出社打刻を行い、7:00に一度退社打刻、その後、朝食を済ませ保育園へ送った後、再び朝9:00に出社打刻する社員もいて、個々人の生活状況に合わせ働けるようになっています。日によって始業時間を自分自身で組み立てながら、業務への貢献をすることができるのです。

しばしば児童館などで出会うママさんたちから、子どもの送り迎えや、子どもが病気になった時の仕事の調整など、復職への悩みを聞くことがあります。お迎えの時間が遅くなることに罪悪感を感じ、退職を選んだママさんもいました。仕事の形態にもよりますが、「女性活躍推進」を進める上でも、勤務時間と勤務シフトに柔軟性があるかどうかはとても重要なことではないでしょうか。

(橋本)制度としてのフレックスタイムやフルフレックスの導入は広がっていると聞きますけど、実態としてフルフレックスを実現している企業はどれだけあるのでしょうか? 実際には限られた社員だけが制度を使っているに留まっていて、組織的な導入が広がっていない企業が多いと思うんです。

(TS藤原)当社には子育て男性は珍しくないし、日中でも子どものお迎えで時間休を使う人がいます。その従業員が参加するミーティングは、子どものお迎え時間帯を避けて設定します。特にそういうルールを作っているわけではなく、価値観の選択肢があるということです。

(間中)フラットな関係と、信頼関係があることが、御社の特徴なのかなと思います。大企業だとしばしばシニオリティ(seniority:職位上位者やベテラン従業員の立場・意見が優先されること)でミーティングが設定されます。

今日は女性活躍というテーマで対談していますが、例えば、高校生の子どもを持つ女性部長と、乳幼児の子どもを持つ女性社員とでは、置かれた環境が大きく異なります。部長は朝8時からフル稼働できるかもしれませんが、1歳児のママは8時だと難しいかもしれない。女性部長の都合でミーティングが設定されてしまっては女性活躍とは言えない。

藤原さんの言う通り、価値観の選択肢があるというカルチャーを作ることはとても大事ですね。

(TS竹田)男性でも管理職を目指さずに職人として道を究めようとしたり、インデペンデントコントラクターとして多彩な仕事に追求している人はたくさんいるので、多様性がより受け入れられたら良いと思います。

(山脇)個々のタイムスケジュールを公開すると良いかもしれませんね。何時に子どものお迎えで、何曜日は小児科診察があるとか。一緒に働く仲間に対して「この時間帯は業務ができない」ことをお互いが共有し合うことで、チーム独自のワークスタイルが作れますね。

(橋本)その通り。パラレルキャリアの人にとっても有り難い。

(山脇)それに関して言えば、管理職ならではのやりがいを企業が明確にしなければいけないと思います。管理職になりたくないから復職しない、管理職になったら生活と両立できないから辞める、管理職になるよりも自分らしく働きたい、という多様な価値観があるなかで、企業としては管理職という選択肢を選んでもらえるようにする必要があります。管理職を目指すか目指さないかは人それぞれですが、ママたちが消去法で管理職という選択肢を外すのではなく、目指すキャリアの一つになれば良いと思います。

(間中)山脇さんには今後、ママカレでの知恵をWITHのなかでも紹介していただきたいです。緊急事態宣言が明けたら、ぜひ“ずぼら料理会”もやりたいですね。

新型コロナウイルス感染症拡大防止のためオンラインで対談するメンバーたち