2021年4月22日、創造的な働き方・組織づくりに関心のあるビジネスパーソンを対象としたオンラインセミナー「TeamSpirit EX Day 2021」を開催しました。早稲田大学大学院早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄氏がゲスト出演し、今求められる「思考の軸」について講演。続いて、入山氏に加え、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス取締役・人事総務本部長の島田由香氏、チームスピリット代表取締役社長 荻島浩司の3人によるトークセッションが行われました。正解がない時代にビジネスパーソンは何を考え、どう働けばいいのかについて、ディスカッションが繰り広げられました。

正解を求めるのではなく、「自分は何をしたいか」を考えるのが重要

入山氏の講演テーマは、『”正解がない時代”のビジネスパーソンに求められる「思考の軸」とは』。入山氏は、コロナ禍をきっかけに社会の変化はさらに加速し、「正解のない世界」に突入していると切り出しました。

同氏は、これまでのように「正解を求める」のではなく、「自分は何をしたいのか」を考えることが重要であると指摘し、そのために自分自身をリードしていく「セルフリーダーシップ」がこれから求められていくと語りました。

自分を導くために重要な3つのポイント

また、自分を導くために重要なこととして、入山氏は3つのポイントを紹介しました。

1.「知の探索」
ずっと同じ環境や同じ人といると既存の知の掛け合わせしか生まれない。そういう場ではイノベーションは生まれず、新たな視野も生まれない。そのため、なるべく広い知、新しい知と出会う「探索」が必要だと入山氏は強調しました。

2.センスメイキング
さらに、知の探索をうまく行うためには「センスメイキング」が必要だと説明しました。これは、自分がやりたいことを、「正しいかどうか」ではなく「納得しているかどうか」で判断する考え方です。

3.SECIモデル
最後に重要なポイントとして挙げたのが「SECIモデル」です。これは自分の考えや思いを言葉にして議論をする創造プロセスです。自分のやりたいことや知識を暗黙知にするのではなく、言語化して共有することで、よりイノベーションは加速していくと入山氏は説明しました。

オフィスはいる?いらない? これからの働き方を考える

続いて、入山氏がファシリテーターを務め、島田氏、荻島の3人よるトークセッションが行われました。

話題は、コロナ禍による働き方の変化を振り返るところからスタート。島田氏は、「コロナ禍がきっかけとなり、働き方は大きく変わりました。ユニリーバ・ジャパンが5年前から続けている、働く場所と時間を社員が選べる新しい働き方『WAA(Work from Anywhere and Anytime)』のような働き方がより広まりました」と説明。荻島も「在宅勤務が浸透し、当社でも100%の社員が今後も継続したいと言っています。一方で、仕事に集中しすぎてこれまで以上に疲労感が大きくなる人もいることが課題」と現状を分析しました。

こうした議論に対し、入山氏は「オフィスのあり方も変わってくるのだろうか?」と疑問を投げかけました。島田氏は、「ユニリーバ・ジャパンでは、今の時代に合わせたオフィスに作り変えました」と即答。同社では、オフィスは「人に会うために必要な場所」と位置づけ、「イノベーションとカルチャー」という2軸を生み出す目的に特化したオフィスにリニューアルしたことを紹介しました。

また、荻島もチームスピリット社内においてオフィスを残すかどうか議論したことを明かし、「会社という単位だけでなく、フロアや座席の“島”でさえも、帰属意識につながります。また、オンラインとオフラインの両方の参加者がいる会議で、オフライン側は議論が盛り上がっているのに、オンラインの参加者は発言しにくいらしく、疎外感のようなものが見られたこともありました。そんな事象もあり、オフィスの必要性を感じました」と説明しました。

入山氏は「オンラインでは視覚と聴覚は使うが、触覚、味覚、嗅覚は使えません。五感を使う場として、オフィスを捉えていくといいと思います」と提言。イノベーションを起こす創造的な場としての新たなオフィス像が垣間見えるディスカッションとなりました。

今、ビジネスパーソンに求められる「幸せ」を選ぶ力

続いて、これからの生産性の高め方について議論が繰り広げられました。荻島が「生産性は分母と分子で考えています。分母は労働時間で、これまではこれをいかに減らすかが議論の中心となっていました。今後は分子の付加価値、つまりイノベーションをいかに生み出すかが重要になります。このイノベーションを因数分解すると、自分たちの幸せにつながります。そして、『何が幸せか』はセンスメイキング、つまり自分たちで考えて選択できるのです」と述べました。

この考えに、入山氏と島田氏は深く賛同。セルフリーダーシップにもつながることから、まさに正解がない時代に求められるビジネスパーソンの思考法とも言えます。

島田氏は「五感をフルに使って、まずは感じること。そして、感じたことについて考えることが大切です」と語り、「感じることはAIにはできません。DXが進むほど、人間はAIにできないこと、つまり感じて考える役割を担うようになります」と説明。それを受けて荻島は、「デジタルがさらに進むと世の中はどのように変化するのか、どのような新規ビジネスが生まれるのかを考えることを、わたし自身が楽しんでいます」と体験を披露しました。

これからの働き方のキーワードは「アライン」

最後に、これからの働き方について議論が繰り広げられました。

島田氏は、これからは“仕事“ではなく“志事”と捉えようと提案。「仕える事も、間違いなく誰かのためになっています。そこに、自分なりのパーパスやありたい姿が重なると志す事になっていく。どうすれば自分がワクワクできるか、という観点で働き方を考えてみてください」とアドバイスした。

続いて荻島は、時間の考え方という観点から、これからの働き方について次のように提言しました。「個人にはライフとキャリアのプランがあり、会社にはビジネスプランがあります。それぞれのプランの時間軸を揃えるにはどうするか、を考えてみてください。そうすると、きっと楽しく働く糸口が見つかるはずです」

この2人のアドバイスを受け、入山氏は「共通するのは“アライン“、つまり揃えていくことですね。島田さんは自分のパーパスを、荻島さんは人生や仕事の時間軸をそれぞれ会社と揃えていく。このアラインは、これからの働き方を考える上で重要になってきそうですね」と締めくくりました。

創造的なオフィスのあり方やイノベーションと生産性の捉え方、そして、自分のやりたいことと会社の方向性をアラインしていくことの重要性など、多くのヒントが詰まった充実のトークセッションとなりました。